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新型コロナ関連ワードの変遷からみる2020年

月曜日, 2020年12月21日月曜日

「100年に1度」と評される公衆衛生上の危機が起きた2020年。この1年間を振り返ると、波を打つかのように感染の拡大と収束が繰り返されていると分かります。

社会に広く浸透しているTwitterには、いろんな言葉が登場しました。時系列に沿って見れば、ある期間は増加し、ある期間は減少する傾向があります。そうした当時の「空気感」「関心度」について、今一度振り返ってみましょう。

 

「マスク」を含むツイート件数と新型コロナウイルス感染者数の推移

4月の緊急事態宣言から第三波を迎えた今日までを振り返ってみますと、トイレットペーパー、マスク、緊急事態宣言、コロナに負けるな、ロックダウン、StayHome、在宅勤務、テレワーク、時短営業、GoToキャンペーンなどのいろいろな関連ワードがTwitterに出現しました。

その中で着目したのは、衛生に欠かせない「マスク」です。世界保健機関(WHO)、世界各国の政府や公衆衛生機関、当局者らが「マスクの着用」「うがいと手洗い」を中心とする感染症対策の徹底を求めており、マスクは1月からこの1年間、一貫して登場し続けているワードでした。

そこで20年1月1日〜12月11日まで「マスク」を含むツイートを抽出し、折れ線グラフで表現してみました。合わせて、感染の拡大と収束との関係性を見るため、その日発表された新規感染者数を対数スケールでプロットしています。

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※「マスク」を含むツイート件数は7日間移動平均を求め、3月1日を「1」とする指数化を行なった
※同じく新規感染者数も7日間移動平均を求めた
※新規感染者数はJX通信社/NewsDigestが発表する統計情報を用いた
※「マスク」を含むツイート件数が増加傾向なら背景を薄い赤、減少傾向なら背景を薄い青とした

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「マスク」を含むツイート件数は、非常事態宣言が1都1府5県に発令された4月7日から3日後の4月10日が「ピーク」でした。7〜8月(第二波)、10〜11月(実質11月から第三波)と感染が拡大している期間も「マスク」を含むツイート件数は増えてはいますが、それでも4月ほどではありません。

確かに3月〜5月はマスク不足により、スーパーやドラッグストアは長蛇の列ができていました。しかし現在は在庫も回復し、マスク着用が一般化しています。こうした市場の変化が、利用者の生活シーンに影響を与えたかもしれません。それによって心理的な変化が起き、ツイートの量に影響を与えた可能性も考えられます。

 

ハッシュタグの変遷から見るマインドの変化

では、この約1年間、利用者の心理状況にどのような変遷があったのでしょうか。時系列の変化を追うために、「マスク」と共にツイートされたハッシュタグのうち上位5件の表を作成してみました。1月〜11月にかけて、このように変遷しています。

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1月〜2月は、未知の感染症に対する驚きや、連日の加熱する報道に食傷気味となったのか「#コロナばっかりで気が滅入るから○○」と題したハッシュタグが流行りました。まだ何が起きているのか掴み切れていないような状況だったとも言えます。

3月に入り、全国各地で感染者数が増え始めるだけでなく、志村けんさんが感染された報道が全国を駆け巡り「#コロナに負けるな」というハッシュタグ付きツイートが増えました。4月になって緊急事態宣言が発令されて以降もその傾向は変わりません。4月〜6月は「みんな一致団結してコロナと戦おう」モードだったと表現できます。

7月になってからは少し風向きが変わります。数ヶ月に及ぶ自粛ムードに対する疲れ、そろそろ経済を回さないと家計が大変という焦りのツイートが増える一方で、完全に収束していないとする理由でGoToキャンペーンの中止を訴えるツイートも増えました。

8月〜9月にかけては感染が収束傾向にあり、また10万円の定額給付金が多くの人たちに行き渡ったせいか、何を買うかそれぞれが希望を語り合う傾向にありました。「#医学的根拠はないがコロナに効くもの」と題して「アマビエステッカー」「愛犬の写真」「趣味」など各々が「自らの元気の源」をツイートしました。

また風向きが変わるのは10月〜11月です。第三波の到来、なかなか徹底できていないコロナ対策に対する苛立ちの声が、政治やGoToキャンペーンなどの施策に向けられました。

「マスク」と共にツイートされた内容だけでも、戸惑い→団結→疲れ→苛立ち→怒りと時間の経過と共に変遷していることが分かります。恐らくは、分析の対象を新型コロナ全般に広げても、傾向は変わらないでしょう。団結のシンボルとして「マスク」「うがい」「手洗い」などが掲げられた分、少し疲れてしまった人が「マスクが重要なのは分かるけど、いちいちツイートするのも違うよね」といった気持ちの変化もあったのではないかと推察します。

 

「感染が拡大している期間」なのにツイートが増えない?

折れ線グラフに話を戻します。「マスク」を含むツイート件数と新規感染者数それぞれの推移は、極めて似たような動きを見せています。

私たちは「マスク」を含むツイート件数が減っているのに、新規感染者数が増えている期間が一定あることに注目しました。その期間を色で塗ってみたところ、いずれも感染爆発にいたる直前の出来事だと分かりました。第○波の感染拡大が抑え込まれ、収束に向かうに連れてツイートが減っているのですが、そのまま減り続けていたら、再び第○波の感染拡大が始まってしまったようです。

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数字的に見て感染収束から再び感染拡大フェーズに切り替わったのと、社会的に見て再び「マスク」についてツイートするような「空気感」や「関心度」が高まるのに、若干の時間的な乖離が起きていることを伺えます。

もちろん「空気感」や「関心度」は、データを解釈する上での一種の「見立て」に過ぎません。ですが、注意喚起を促すような「マスク」を含むツイート件数がもう少し早く増えていれば、それ自体が注意喚起や意識向上につながって、もしかしたら世の中の「空気感」はもう少し変わった可能性も否めないのではないか、と私たちは考えます。

 

まとめ

ハッシュタグの傾向を追う限り、4〜5月にあった「頑張ろう!」「団結しよう!」という掛け声はかなり少なくなり、相対的に苛立ちや怒りの声が増えています。このままさらに我慢を重ねて、精神的に疲れてしまい「もう無理だ」と爆発させてもおかしくはないでしょう。

4〜5月と比べて1日あたりの感染者数は増えているものの、ワクチンの開発が急ピッチで進み、どのような行動が感染に繋がりやすいかも解明が進んでいます。小さな歩幅ながら着実に前へ進んでいるのですが、大勢のツイートから苛立ちや怒りの声が垣間見える現状を、社会全体としてどのように考えればいいのかさらなる議論が必要になっていくでしょう。

マスク、うがい、手洗いの重要性はもちろんですが、一人ひとりの声に寄り添い、新型コロナが私たちの生活をどのように変えたのかを共有し合い、対話する機会があっても良いのかもしれません。

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