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「#あれから10年」未来を考えるキャンペーンから見えること

水曜日, 2021年4月14日水曜日

※本ブログは株式会社JX通信社のご協力により寄稿していただきました

 

東日本大震災から10年が経った2021年3月。Twitterで、大震災の記憶と学びをつなぎ、未来の災害を考えるキャンペーンが1カ月にわたって開催されました。

#あれから10年」「#防災いまできること」などの共通ハッシュタグでツイートすると、期間限定でTwitter Japanのデザイナーが作成した折り鶴の絵文字も表示される仕組みです。もしかしたら、記憶にある方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。

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キャンペーンには、報道各社が運営する50のツイッターアカウントが参加し、東日本大震災に関するニュース、防災や減災の特集記事などをツイートしていました。私たちJX通信社(@NewsDigestWeb)も参加しました。

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これらのハッシュタグはこの1カ月どのように使われ、広まったのでしょうか。そして記憶と学びは、どれほどつながったのでしょうか。

※対象としたツイートについて

#あれから10年 #防災いまできること #あれから私は #これから私は #東北ボランティア #10yearslater #lovefortohoku のいずれかのハッシュタグを含むツイート(具体的に言及が無い限りリツイート、引用ツイートを含みません)

 

報道各社のツイート件数の推移

まずは、キャンペーンに参加した報道各社のツイート件数を見てみましょう。報道各社別に色を変えた積み上げ棒グラフを作成しました。

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3月始めの1週間は、およそ50件/日以上のツイート件数でした。そしてリツイート件数は4日目から急に増え始めます。大勢の注目を集めるようなツイートが集まった証左であり、3月11日以前から着実にハッシュタグが浸透していたことが伺えます。

ツイート件数は8日から11日にかけて一気に増加します。東日本大震災から10年が経つ11日には350件近くツイートが発信され、10,000件を超えてリツイートされました。

しかも、グラフの通りで12日以降もツイートは続き、かつ注目を集めリツイートされたツイートもありました。例えば、南海トラフ地震の危険性を訴えるツイートや、東日本大震災の津波を煙突に逃れて助かった証言をVRで体験できる記事を知らせるツイート、警視庁災害対策課のTwitterの中の人を取材したツイートなどです。

 

3月始めの報道各社から他団体への広がりが鍵

キャンペーンは、趣旨に賛同して参加した報道各社の発信に留まりません。多くの人々に広がり、積極的な発信につながったと分かりました。報道各社と一般の人々のツイート件数の推移をグラフで表現しました。

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一貫して、報道各社からのツイート件数よりも一般の人々からのツイート件数が多いことが見て取れますが、一方で報道各社やさまざまな団体からのツイートがハッシュタグやその目的の認知向上を牽引していました。

特に5日以降、テレビ局のアカウントによる「震災への備え」に関するツイート、避難所生活の環境について問題提起するオンラインメディアのアカウントによるツイートに関心が集まり、ハッシュタグの使用が広がっていきました。報道各社をはじめとする方々のツイートが、多くの人々が自分たちの経験や学びをツイートするという行動を誘発しました。

ハッシュタグの利用は、報道各社から他団体、そして一般の人々に具体的にどのように広がっていったのでしょうか。以下にまとめました。

  1. 11日前の段階で団体から団体への情報の広がりが加速:まずハッシュタグの利用が広がったのは、認証済みバッジがついているような、いわゆる「公式アカウント」でした。東日本大震災からの10年を振り返るなどのツイートが見られ、Twitter Japanからの呼びかけに賛同してくれた駐日外国公館のアカウントによるツイートは多くのエンゲージメントを獲得していました。
  2. 復興支援を地道に続けてきたインフルエンサー層のフォロワーにリーチ:次にリーチしたのが、一般の人々のなかでも東日本大震災からの復興に深く関わってきたスポーツ選手や芸能人のファンでした。有名人の活動と結びつけて「#あれから10年」と共に震災からの10年を振り返るツイートが見られました。イラストで防災を説明する絵師さんなどの参加も強く影響しているといえそうです。
  3. 11日前にハッシュタグが多くの一般の人々へ広がる:そして、多くの一般の人々にハッシュタグが広がっていきました。震災当時の体験を振り返るツイートや政治的な主張をしているツイートなど、幅広い層が利用し始めました。

これらの動きを経て盛り上がりは8日から12日にかけてピークを迎えます。特に東日本大震災からちょうど10年となる11日には約30,000件のツイートが確認できました。Twitter Japanと報道各社によってスタートした企画ですが、11日にツイートされたツイートのうち約99%は一般の人々が占めるまでに広がっていきました。

また、上のグラフを拡大して見ると、11日を過ぎて14日まで多くのツイートがあったことに気付きます。東日本大震災当時の体験や災害時に必要な知識を思い出しツイートする人が現れるなど、「3.11」をきっかけにしたツイートが数日続いていました。

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具体的には、東日本大震災で家族を亡くした経験やボランティアとしての体験を振り返るツイート、震災に関するニュース、著名人アカウントによる追悼のツイートを多く確認できました。

それ以外にも、ハッシュタグに触発されたのか「力を合わせて乗り越えよう」という呼びかけがあったり、自らの夢を語るツイートがあったり、ハッシュタグそのものが未来に前向きな感情を抱くきっかけにもなっていたようでした。

 

のべ13億人に届いたであろう「東日本大震災の記憶とこれから」

ツイートのリツイート回数も見てみましょう。一般の人々のツイートは、報道各社のツイートよりもリツイートされており、特に3月11日は120,000件以上もリツイートされていたと分かりました。報道各社による発信だけでなく、一人ひとりが10年前の大震災の記憶を思い出し、得られた学びを共有したことが共感を呼んだと考えられます。

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ちなみに、ハッシュタグの付いたツイートはどれだけの人の目に触れたのでしょうか。ツイートを発信した人、そのツイートをリツイートした人、それぞれにフォロワー数を足し合わせていくと、1カ月で延べ約13億2390万人になることが分かりました。

ただし、実際はそれぞれのフォロワーのタイムラインは時系列表示やアルゴリズムによって最適化されており、Twitterのタイムラインの早い移り変わりのなかでこれらのツイートが全て彼らの目に振れていると限りません。しかし、ツイートが届く延べフォロワー数のポテンシャルは素晴らしいといえるのではないでしょうか。

日別の詳細を見てみましょう。ハッシュタグ付きのツイートをした報道各社と一般の人々それぞれのフォロワー数合計を日ごとに集計したグラフが以下のとおりです。1カ月を通して一般の人々によるツイートは延べ約8.8億人に、報道各社によるツイートは述べ約4.4億人に届いていました。

ちなみに、もっともツイート件数が多かった11日には、一般の人々によるツイートが延べ約3.5億人、報道各社によるツイートが延べ約1億人に届いているとグラフから分かります。

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まとめ

今回のキャンペーンの初動は報道各社中心で始まりましたが、その意義と重要性を理解した多くの人々が11日前後で「経験」を語り始めたことも大きな特徴だといえます。

東日本大震災から10年が経つ11日に35,000件/日のツイートが発信されるだけでなく、その後もツイートが続くなど「その日だけ」で瞬間的なピークが作られるのではなく、1カ月を通して大きな山ができた印象です。その山の大きさは、1カ月間で10億人以上に到達するほどです。中には、過去の振り返りにとどまらず、11日以降も未来に目を向けた前向きなツイートも散見され、一つのハッシュタグが様々な目的で使用されていることも分かりました。

東日本大震災が与えた衝撃は大きく、記憶を紡いでみてあらためて「自然災害から身を守る」ことへの意識が高まりました。自分ごと化した人々の会話を通してそれを継承する大切さを学んだ1カ月間だったのではないでしょうか。

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