マーケティング

映画「ジョーカー」における会話のインパクト

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月曜日, 2020年2月10日月曜日

アカデミー賞最多11部門でノミネートとなった「ジョーカー」。本日、主演男優賞と作曲賞を受賞されました。

実は、テレビ広告とデジタル広告を連動したマーケティング施策を実施し、日本での記録的な興行収入を達成しています。また、Twitterでのキャンペーンでは、会話が大きく盛り上がり、観客動員数増加に大きく貢献することができました。

今回は、ワーナー ブラザース ジャパン様にご協力いただき、テレビ広告とデジタルメディアにわたるマーケティング活動のブランドリフトを検証するため「クロスメディア調査*」を実施しました。調査の結果、Twitterで生まれた会話が鑑賞意向の喚起に大きく貢献していたことが明らかとなりました。

*Kantar Japan社の”Cross Media Survey”による分析モデル

実際にTwitter上で、どのように話題が拡散されていったのかを見ていきたいと思います。

Twitterでは、上映開始日に全リーチ型の広告(プロモトレンドスポットライト)を配信し、それをきっかけにツイート量が急増しました。(参照図)

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また、「ジョーカー」に関するツイート投稿を含めたインプレッション(表示回数)は、広告だけのものに比べ約1.5倍に達し、Twitterでは広告が起爆剤となり、利用者同士の会話へと広がっていったことが明らかとなりました。(参照図)

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どのような内容が会話されていたのか? 

利用者はジョーカーを観る前と観た後の両方のタイミングでツイートする傾向がありました。映画を観る前は、「観たい!」といった鑑賞意向が目立ち、特に、Twitter上でトレンド入りしたことが鑑賞意向を更に喚起し、「トレンドに上がっているのを見ると、観たくなる」や「トレンドにジョーカー。早く観たい」「トレンド入りして、観たい気持ちが膨らむ」というツイートが見られました。

映画を観た後は、感情を刺激するストーリーであったこともあり、「最狂で最凶のジョーカー」「常軌を逸した傑作」など映画に対する感想が数多くツイートされています。人には、感動や共感したことを他人に共有したいという欲求があります。他のプラットフォームと異なり、Twitterは、ツイートやリツイートで自分の気持ちを拡散でき、それがきっかけで一般の方を巻き込んだ話題を生むほか、いいねで共感を表すことができるプラットフォームです。ジョーカーの感情を刺激するストーリーとTwitterならではの感動や共感を共有できるプラットフォームの特長から相乗効果が生まれ、膨大な会話量につながったといえます。

推奨においては、「過去最高にオススメ」「自分に置き換えて観て欲しい」といった推奨意向が高いものもあれば、「他人におすすめできない傑作」など安易に推奨できないツイートもあり賛否両論見られましたが、その会話に刺激された人たちが、更に鑑賞意向を高める結果となりました。

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また、リピート意向のツイートもあり、ジョーカーに対する熱量の高さが伝わってきます。「言葉にできない・・・控えめに言ってあと三回は劇場で観たい」や「ジョーカー、とてもヘビーな気持ちになる映画だったけれども、謎にもう一回観に行きたい」「あと5回、いや50回観たい」などと、何回も鑑賞したいというツイートが多くありました。

このように、Twitterでのツイート量(投稿・リツイート)が増え、Twitter上でトレンド入りし、更に多くの人の目にとまることにより、鑑賞意向を掻き立てる構図を確立しました。

今回の調査では、テレビ広告とTwitter広告の態度形成における貢献度と費用対効果(ROI)を比較しました。分析の結果、テレビは認知形成に、Twitterは鑑賞意向形成に大きく貢献していることが分かりました。また、テレビと比較した場合、Twitterの態度形成における費用対効果は極めて高いことが明らかとなりました。特に、鑑賞意向の喚起でテレビ広告の6.4倍の成果があります。

一つのメディアだけでなく、テレビとTwitterの両方を活用しシナジー効果を高めた結果、観客動員数の増加に繋がったと言えます。

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ジョーカーの会話が生まれやすいストーリー性と、Twitterの会話が活性化されやすい特長が相まって、Twitterでの会話が盛り上がり、人々の関心を高め、多くの人たちを劇場へ足を運ばせました。

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今回の調査では、ジョーカーの興行的成功の背景にTwitterを主とするSNSでの口コミ(会話)が大きく貢献しており、特に公開当日のプロモトレンドスポットライトがその後の興行を後押しをしていたことがわかりました。また、Twitterにおいては公開前から作品への興味・関心が高いと考えられるユーザー層にアプローチを行い、公開前にコアファンの熱量を最大化出き、公開当日にはライトファンまで大きな拡散力を得られた一因と考えています。

吉田 英央氏

ワーナー・ブラザース映画宣伝部 メディア/オンライン シニアマネージャー