マーケティング

進化するTwitter分析 空気や雰囲気の可視化・定量化

火曜日, 2022年3月8日火曜日

Twitter上では、日々様々な会話が飛び交っています。同じ趣味を持つ仲間と「推し」について語ったり、クラスの友人と「好きなTV番組」「好きな芸能人」で盛り上がったり。地元の話、猫の話、政治・経済の話、就職の話など、私たちは、オフライン上の日常会話と変わりないくらい、Twitterで発信し続けています。

見方を変えれば、ある特定の瞬間の「気持ち」を表す膨大なデータがTwitter上には蓄積されているともいえそうです。

こうしたデータを集計すれば、ある一定期間の「言語化が難しい空気や雰囲気」を可視化・定量化できる可能性があります。すでに大学や研究機関などアカデミック領域だけでなく、民間企業でも研究と活用が進んでいます。今回はその研究領域の一部をご紹介します。

機械が得意な分析、人が得意な分析

JX通信社は、「言語化が難しい空気や雰囲気」の可視化・数値化への挑戦について、これまで何度か寄稿してきました。

例えばM-1グランプリ2021分析では、決勝に出場した芸人に関する言及数を、機械で集計しました。その結果、オズワルド、インディアンス、錦鯉への言及数が多いことがわかりました。

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ちなみに、この組み合わせは、審査員の採点による上位3組とも一致しています。審査員から見ても、固唾を飲んで見守っている視聴者から見ても「面白い」と感じた3組だったのではないでしょうか。

緊急事態宣言の前後比較分析では、感情分析ライブラリ「ML-Ask」を用いてツイートを10種類の感情に分類してみました。

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1回目の緊急事態宣言時は哀と怖の比率が下がり、その分だけ安と喜の比率が上がりましたが、2回目は逆に安と喜の比率が下がっています。その代わり、怖と嫌の比率が上がりました。これらはあくまで定量的な傾向ですので、なぜなのかを知るためにツイートを目視でチェックしてみました。

その結果、1回目の宣言発令時は「嫌だけど仕方がない(これで良くなる、事態は改善する)」という声が相対的に増えていましたが、2回目の宣言発令時は「収束するのか不安(本当に良くなるのか、事態が改善しない苛立ち)」という声が相対的に増えていたことがわかりました。

「不安」「苛立ち」の詳細は、機械よりも人間の目視の方が効率的に発見できます。例えば「ストレス」という単語がよく登場するのですが、1回目は在宅で外を出歩けないストレスを解消するために「爆食い」「爆買い」「Twitter見る」「『あつまれ どうぶつの森』の沼にハマる」といった独自の取り組みを紹介する文脈でした。一方2回目は、現状に対するイライラからくるストレスをそのままツイートする傾向もあることがわかりました。

文脈の理解、意味の理解は、機械よりも人のほうがまだまだ上手かもしれません。

実際、自然災害(東日本大震災、熊本地震など)に被災した方々の食事に関連するツイートを分析した際は、機械では大まかな傾向しかわからなかったため、1件1件のツイートを目視で確認する方法に切り替えました。

その結果、東日本大震災において「1週間ぶりに食べた野菜がプチトマト」「カップラーメンばかりでおかずが食べたい」といったツイートを発見し、1週間経過しても炊き出しで「温かい食事」「野菜」が被災者から広く求められていたという実態にたどり着きました。

一方で、熊本地震では本震から3日目で「温かい食事」「野菜」を切望するツイートはほとんどありませんでした。「野菜がある」とわざわざツイートする人もいないほど、熊本地震では炊き出し等が迅速に行われていたことが伺えます。

機械が得意な分析、人が得意な分析を選り分けることで「言語化が難しい空気や雰囲気」の可視化・数値化に近付けると考えます。

進化し続ける機械の分析

昨今のAI(自然言語処理、動画解析など機械学習)技術は飛躍的進化を遂げており、従来型のアルゴリズムでは難しかった分析も、容易に実現するようになってきました。

その1つがツイートの自動分類です。企業のマーケティングにおいて、Twitterの活用とUGC(User Generated Contents=ユーザー生成コンテンツ)数の増加は売上に強い影響を与えるといわれています。しかし、消費者の購買行動に影響を強く与えるツイート(口コミ)と、商品やサービスに言及はしていても影響は強くないツイートは分けてみたいものです。

そこで、ツイートの内容や合わせて投稿された画像を機械が読み込み「サービス利用前」「サービスの利用を止めた」など、自動的にタグを付ける仕組みが開発されています。

例えば、商品を買う前のツイートと、商品を買った後のツイートを比較することで、商品にどのような期待を持っていて、実際に使用してどのような感想を抱いたかを、まるでカスタマージャーニーを描くかのように可視化することができます。

これまでこうした手法は人が時間をかけて分類することが多かったですが、機械がカバーできる範囲も広がったため分析にかかる時間も圧縮できるようになりました。今後、こうした作業時間を圧縮するための分析技術はますます進化し続けるでしょう。

ただし、文脈を理解する、言葉の裏にある投稿者の意図を読み取る、たった数人しかツイートしていないが重要な内容を拾い上げるといった分析は、まだまだ人の力が必要です。

機械と人、それぞれが進化することで、新しいTwitter分析もより一層発展していくでしょう。

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